SAS Japan

活用事例からデータ分析のテクニックまで、SAS Japanが解き明かすアナリティクスの全て
Analytics | Data Management
小林 泉 0
アナリティクスの効果を最大化するデータマネージメント勘所

変わ(る・るべき・れる)データマネージメント データ、さらにはビッグデータを使用して競争優位性を獲得しようとするにつれて、企業・組織はよりスピード感をもって、試行錯誤を繰り返す必要にせまられおり、データマネージメント戦略やアプローチについても従来とは異なる方法にシフトしつつあります。 これまでのアプローチ 従来のアプローチでは、まず、ビジネスユーザー部門が「問い」を決めた上で、IT部門が「問いへの答え」のためのインフラとデータを準備していました。例えば、「先月の地域別、製品別、チャネル別の売り上げはどうなっているか?」や、顧客へのアンケートに基づいて、「顧客は何を考えているか?」などです。このような過去や現状を把握するための「問い」は、ほとんどの企業・組織で共通している、基本的な業務プロセスを実行するために適した方法です。 この方法では、ユーザー部門が本当に欲しい答えを得るまでにはIT部門と何度もやり取りを繰り返す(Iteration)必要があります。その作業には数週間要するケースも少なくありません。ビジネスユーザーにとっては、事前に完璧な「問い」をシステム的な要件として定義することは困難であり、一方でIT部門は業務に対する理解が100%完全ではないためです。しかし、ひとたび、ITインフラやデータが用意されると、その後は、「決まりきった反復的な(Repeatable)」分析、すなわち現状を把握するための分析(これはAnalysisです)ビジネス・インテリジェンスという目的に使用されます。 アナリティクスおよびビッグデータ時代のアプローチ 新たな洞察の発見や予測モデルを作成し、よりよい意思決定やアクションを実践することを主目的とするアナリティクスにおいては、このプロセスが極端に言えば逆になります。まず、IT部門が収集したデータを蓄積する基盤を構築し、その後にビジネスユーザーがその基盤を利用して新しいアイディアや問いを探索するという順序です。この作業は、創造的な発見的プロセスであり、ビジネスユーザーは使用しているデータが特定の目的にあっているかどうかを自身で判断することができると同時に、これまで知らなかった傾向や関係性を明らかにしたり、更なる深い分析のために役立つかもしれないデータを見つけたりします。 この新しいアプローチの特徴は、ユーザー自身でデータ加工やその先の分析を繰り返し実施(Iterative)することに適しているということです。アナリティクスにおいては、仮説検証、試行錯誤、さらには失敗をいかに高速に実施するかが重要なため、この繰り返し作業(Iterative)をユーザー自身で迅速に行う必要があるのです。 RepeatableとIterationとの違い 同じ動作を繰り返す、例えば毎月同じ種類のデータに対して同じクエリーを実行しレポートを作成するようなことがRepeatableです。それに対してIterationとは、異なる動作を繰り返す事を指し、データや見方を変えながらデータを探索しつつ仮説検証を繰り返したり、予測モデル作成や機械学習アルゴリズムのための説明変数や特徴量を探索しながら作成していくことを意味しています。BIレポーティングは、 Repeatable, アナリティクスはIterativeと覚えておいてください。 Iterativeなデータ加工プロセスでは以下のように、SQLだけでは困難な処理が多く含まれます。 集約(合計や平均などだけではなく、中央値や標準偏差などを含む) 転置(下記ABTにも関連) 統計的判断(ある事象、たとえば売り上げの減少が、単なる偶然のバラツキの範囲なのかなのかそうでないか) 欠損値や異常値の検出と補完(0で補完するだけでなく、平均値や中央値など) 新しい変数(カラム、列、特徴量とも言います)の作成 重複データの検出と対応 クレンジングや表記をあわせる標準化 SQLジョイン マージ(SQLジョインでは不可能な複雑な条件でデータを結合) 数値データの変換(対数変換や標準化) 次元圧縮 よく見かける現場の状況 これら2つのアプローチの違いは、従来活用していなかった履歴データや、ビッグデータ、非構造化データと呼ばれるような装置からのログデータやテキストデータを活用しはじめようとする際に顕著になります。業務システムや既にデータウェアハウスに格納されている、主キーやカラム構造がわかりやすいデータとは異なり、このような新しいデータは、行を特定するためのID項目。がなかったり、論理的な1行が複数行にまたがっていたり、欠損値が多い、そもそもどんな値が格納されているべきかを業務ルールから特定できるわけではないなど、必ずしもRDBMSに格納しやすいデータとはいえません。このようなデータを、キー構造や値の制約などを厳格に管理することに重きを置く従来型のRDBMSに格納しようとすると、IT部門は、まずユーザー部門に対しして、「どのような種類のデータをどのように使用するのか」といった目的定義からスタートします。わかりやすくいうと、どのようなSQLを投げるかが決まらないとテーブル構造やリレーションシップなどのデータモデル設計ができないからです。しかし、「アナリティクス」においては、どのようにデータを加工するかは、分析のプロセス中に考えることですし、分析が進むにつれて加工の仕方も変わってくるため、あらかじめ用法を明確に定義しておくことはできません。データを触ってみないと加工の仕方は決まりませんし、将来的に別の活用方法になることもあります。同じデータであっても、データを縦方向に長くする方が良いのか、横方向に長くのが良いかは、そのときどきのデータの見方によって変わります。従来のデータマネージメントのアプローチでは、この瞬間に「卵とニワトリ」の問題が発生し、アナリティクスの取り組みの大幅なスピードダウンを招くことになります。 なぜ従来型のアプローチになるのか? IT部門がこのような従来型のデータマネージメント・アプローチを取ろうとするのには、理由があります。RDBMSを利用する場合、さらにはHadoopを利用する場合には特に、ビジネスユーザーが生データを加工することはIT技術的・スキル的に困難だと考えており、なんらかの「おぜんだて」をしてユーザーに使いやすいソフトウェア環境とともに「公開」しようとする意識があるためです。実際にそのとおりであり、高度な分析をするためには、さすがにSQL程度は使えるor考え方がわかる必要はありますが、HadoopのMapReduceはハードルが高すぎます。しかし、アナリティクスにおいてSQLは道具として不十分であり、必要なデータ加工をするためにはMapReduceやその他のデータ加工言語を駆使して、場合によっては分散コンピューティングを意識しながら使いこなさないと実現できないデータ加工要件が存在します。この部分のスキルを獲得したり人材を確保するのはコスト高であるだけでなく、ビジネス・スピードを損ないます。   先行してビッグデータアナリティクスで競争優位性を築いている企業・組織はここの事情が少し異なります。彼らにとってアナリティクスの活用はビジネスモデルの根幹であるため、スキル獲得(教育、学習、採用)はコストがかかってもMUSTであると考えています。ただ、それでも、分析組織として拡大・成熟してきたチームの管理者は、昨今のデータ分析人材難もあいまって、自分の抱えるチームの生産性に課題を感じ始めています。 最新のテクノロジーがアプローチ方法の変革を可能にします 実は、このようなIT部門の懸念はすでに過去のものとなっています。テクノロジーは進化しソフトウェアは成長しています。いまや、データサイエンティストのような「分析もITもこなすスーパーマン」ではない「ビジネスユーザー出身の分析者」(ガートナーはこれを市民データサイエンティストと呼んでいます)であっても、Hadoopの技術的なスキルなくとも、グラフィカルなユーザーインターフェースや分析者が通常分析に使用する言語で、Hadoop上のデータを自由自在に加工できる手段が存在します。つまり、ビッグデータ時代においては、データは基本的な欠損値の補完などのクレンジング処理だけを施した生データを置いておくだけで、データ分析者が、高度なITスキルを持たなくともハイパフォーマンスに分析処理を実行することができるのです。   アナリティクス担当者(誤解しないでください。レポーティングしたい分析者とは異なります)が考えていることは、 「データの形式や品質はさておき、とにかくデータにアクセスできるようにして欲しい。加工は自分たちでできるから、とにかくスピード優先で」   となります。このような要望にこたえるためには、従来型のテクノロジーを使用したデータウェアハウスの改修という方法では困難です。様々な形式のデータを、データモデル設計をすることなく、適切なコストで、まずは蓄積するということが必要になり、そこは今の時代においてはHadoopが最適です。また場合によって、既存のシステムとの連携においては、フェデレーション技術のように仮想的に集めたかのように見せる必要があるケースもあります。このような環境では、従来のデータウェアハウスのように整ったデータが準備されているわけではなく、使用する際に整えることになるため、分析者がデータ品質を目的に応じて整える必要があり、Hadoop上でデータプロファイリングやクレンジングを自身で実施します。さらには、あらかじめ直近使用する予定のないデータをも捨てずに蓄積しておくデータレイクという戦略をとる企業・組織も出てきました。 最初のゴールはABT作成である IT部門が、このアナリティクスにおけるデータ加工の最初のゴールを理解すると、企業・組織におけるアナリティクスの取り組みが飛躍的に加速し、IT部門のビジネスへの貢献の仕方も理にかなったものになり、IT投資の目的や方向性を設定しやすくなります。 アナリティクスが欲しているのは、BIクエリーに適している正規化データモデルやスタースキーマ・データモデルではありませんし、また「目的特化型のデータ・マートが欲しい」というわけでもありません。まず最初の目的は、ABTすなわち、Analytical Base Tableを整えることです。ABTとは、15年以上前からある考え方で、アナリティクスにおいてデータの分布の確認や傾向の探索、予測モデルの作成のための基本テーブルのようなものです。 顧客の購買行動を予測する際を例に考えてみましょう。当時はそのまま「1顧客1レコード」と呼んでいましたが、最近ではSASジャパンでは「横持ちテーブル」ということが普通です。対して、履歴データを縦に持ったものを「縦持ち」と言います。簡単に言うと、顧客に関する全てのデータ、顧客マスターにある属性情報に始まり、契約情報、購買履歴、コミュニケーション履歴、キャンペーンへの反応履歴、店舗やWeb上での行動履歴、など、最近の言葉で言えば、顧客の360度ビューをデータとして表現し、1人の顧客につき1行使用し、これら情報を列方向に持たせたデータです。ご想像の通り、このテーブルは時には列数が数百、数千、数万になったりすることもあります。ただ単に履歴を横に持つから横に長くなるというよりは、顧客を特徴づける説明変数や特徴量を作成していくことでも、その数が増えていきます。単にAという商品を買ったというだけでなく、何曜日の何時にどの店舗に来店したのか、来店頻度は? 金額は? 金額の合計は? など、その顧客がどのような行動、嗜好をもつ顧客なのかを特徴づけるデータを作成します。どのような列、説明変数や特徴量を作成するのが良いかは、今回の趣旨ではないので省略しますが、これまでの業務上の勘と経験、ノウハウ、そして一番重要なのは、企業が顧客とどのような関係を気づきたいかという顧客戦略、これらがあれば、おのずと決まってきます。また、ある程度世の中にベストプラクスもあるので、書籍や弊社コンサルタントに期待することもできます。   なんだ、全てのデータをくっつけたデータマートを作ってあげればいいのではないかと思うかもしれませんが、ABTを作成する作業は前述の通り分析作業をしながらのIterativeなプロセスのため、分析者自身が作っていく必要があります。アナリティクスの活用成熟度の高い分析チームになると、データの一貫性を理由として、複数のテーマでこのABTの一部の列を共有するようになります。この段階になって初めて、ある程度仕様が固定化されたデータマートのようになりますが、ビジネスの変化に応じて柔軟・迅速に変更していく必要があるという性質は変わりません。  IT部門の新たな役割:データスチュワード このように、アナリティクスのためのデータマネージメントプロセスを実践するためには、アナリティクスという具体的なビジネス価値を創出するための要求とスピードに対して、迅速に対応する必要があります。その主たる役割は、従来型のシステム開発データベース構築やデータモデルの設計ではなく、「ユーザーの使いたいデータはどこにあるのか?」、「社外データはどのように調達できるかどうか?」、「他部門ではどのようにそのデータを活用しているのか?」といった疑問に答える役割で、一般的には、「データスチュワード」として定義されている役割です。データスチュワードという役割は、約10年前にその必要性が叫ばれたBIをサポートするBICC(ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシー・センター)でも定義されていましたが、昨今、アナリティクスの広まりによって、その役割の重要性が再認識され始めています。部門横断的に業務とアナリティクスおよびITに対する一定の理解とスキルを有しつつ、主たる役割はアナリティクスとそれに必要なデータやスキルを効果的・効率的にマッチングすることです。最近では、必要な全てのデータやスキルを組織内で準備することが現実的ではなくなってきており、その解決策の一つである、「オープンイノベーション」の事務局的な役割を担っているケースもあります。

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小林 泉 0
ビジネスで「需要予測機能」を活用するために必要な3つの要素

ビジネスに使える「良い予測結果」を得るために 今回は、8月にリリースされたSAS Forecast Serverの新しい機能を紹介しながら、データが理想どおりに画一的にはなっていない実際のビジネスの現場で「良い予測結果」を得るために必要な3つの要素についてご紹介します。 はじめに 需要予測はもともと、天候などの不確実なばらつきをもつ外的要因という制約のもとで、顧客満足度や販売機会を最大化(欠品による損失の最小化)しつつ、売れ残りや在庫保有といったコストを最小限にするための手段のひとつです。生産から販売までのリードタイムが長い商品の販売量の予測や、一定期間先の需要量の取引を行うエネルギーの売買に携わる企業にとっては、正確な需要予測が不可欠です。今回は、予測結果そのものの精度をビジネス上の課題解決に見合う精度にするために、欠かせない要素ついてご紹介します。 欠かせない三つの工夫 SASは長年、SAS/ETSやSAS Forecast Serverなど、時系列予測機能を提供してきましたが、それらツールを使用して実際に成果を出している企業に共通するのは、これらのツールに用意されている時系列予測アルゴリズムを単に使用するのではなく、精度を高めるためのなんらかの"工夫"をしているということです。それをまとめると以下の3つに集約されます。 予測対象の実績データ(以下、時系列データ)のセグメンテーション マルチステージ(他段階の)予測モデリング 予測結果の追跡 予測のためのアルゴリズムは世の中に多数存在しますが、それを単純に適用するだけでは、ビジネス上の意思決定に利用可能な精度を実現するのは実は困難です。従来は、上記3つの工夫をシステム構築の際に考慮し独自に仕組みを作りこむ必要がありました。SASはこれらをベストプラクティス化し、ツールそのものの機能としてリリースしました。新たにSAS Forecast Serverに備わった、それら3つの機能について簡単にご紹介します。 1.時系列データのセグメンテーション どの店舗でいつ何が売れるのかを予測しなければいけない小売業 客室の埋まり方を予測しなければならないホテル業 顧客満足度を落とさずに欠品率をコントロールするために、どの施設レベルで予測すべきかに頭を悩ませる流通業 エネルギーの使用量を予測しなければならないデータセンター事業者やエネルギー供給企業 乗客数や交通量を予測する航空関連企業 コールセンターの需要を予測して従業員の配置を計画する通信会社 など、どのような予測業務においても、最初のステップは、自社の時系列データがどのようになっているかを理解することです。 理想的な時系列データ 従来の予測技術にとって最も完璧な(うれしい)時系列データはこのような形(図1)をしています。量が多く、データ期間が長く、安定していて、同じパターンが繰り返され、欠損値がほとんどなくパターンが予測しやすいという特徴があります。   このような理想的な時系列データが仮に存在したとすれば、自動化された予測エンジンと単一の予測モデリング戦略で簡単に良い予測結果が得られます。 実世界の時系列データ しかし現実世界では、企業が保有する時系列データはもっと多様です(図2)。   洗剤のようにいつでも売れる安定した(Stable)需要 バーベキューセットのように季節性(Seasonal)のある需要 あるいはレベルシフト(Level Shift)があるような需要-例えば、市場や販売チャネルを拡大したタイミングなど- 新製品の投入や新市場への進出など、データ期間が非常に限定されている(Short History)。 自動車の特定の補修部品のようにスパースなデータ(あるいは間歇需要とも言います)(Intemittent)。 ハロウィングッズのように一年に一回のある週や月しか売れないものもあります(Holiday)。 このようにそれぞれまったく異なる時系列パターンに対して単一の予測モデリング戦略を適用しても良い予測結果は得られません。これらにどのように対処するかが「良い予測結果」を得られるかどうかの分かれ道になります。 時系列データのセグメンテーション この問いに対する解決策は、時系列データのセグメンテーションです。時系列データのセグメンテーションとは、時系列データのパターンに応じて異なるパターンに分類する方法です。これは、需要予測プロセスにおいて最も重要な最初のステップのひとつです。分類した後にそれぞれのパターンに応じた予測モデリング戦略を適用することが「良い予測結果」を得るための秘訣となります。 これにより、 Stableなデータに対しては、ロバストなARIMAモデルを適用し、 季節性を示すデータには季節性モデルを、 Level Shiftタイプにはレベルシフトの要素を説明変数に利用できるARIMAX手法を、 新製品パターンには類似性分析のテクニックを用い、 スパースなデータに対しては間歇需要のための予測モデルを、 Holidayパターンにはカスタマイズした時間間隔モデルを使用する

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小林 泉 0
アナリティクスの産業革命-機械学習による自動化

15年前 2000年、当時すでに(今では機械学習に分類されるいくつかのアルゴリズムを搭載した)予測モデリングツールSAS® Enterprise Minerはこの世に存在していました。また、予測モデリングにおけるSASの方法論であるSEMMAプロセスも同時に存在していました。SEMMAプロセスとはSASがそれまでに培ったベストプラクティスであり、Sample(当時は1%サンプリングで十分だと立証する論文がいくつもありました)、Explore(探索、分布の確認)、Modify(補完、置き換え、変換、連続量のカテゴリカル化など、予測モデルの精度を上げるための工夫。昨今Deep Learningでは逆にこれらをせずにありのままがいいという考え方もあります)、Model(決定木などのモデル手法の適用)、Assess(複数の予測モデルから予測パフォーマンスの良いものを選択)であり、これらを順に実施することで誰でもそれなりに精度の高い予測モデルが作れました。この方法論と方法論にのっとったEnterprise Minerのおかげで、初めての分析プロジェクトにおいて何の迷いもなく顧客の解約を予測する予測モデルを作成でき、一瞬のうちに自分が「できる分析者」になったかのように感じたのを覚えています。 学生時代、実験結果の分析にSASをプログラミングで使用していた筆者にとっては、アイコンを並べて線を繋ぐだけでよいこのツールが魔法のように感じていました。しかし同時に「アイコンの並べ方、設定、当てはまりのいい手法にはパターンがあるなあ」と感じていましたし、加えて「マウスのドラッグ&ドロップという操作がちょっと面倒」だとも感じていました。 その頃、あるお客様は、サンプリングではなく全件分析で得られる価値に重きを置き、数日にわたる予測モデリング処理を実行していました。当時の世界で最大級のUNIXを使用したチャレンジは、もちろん技術的な制約により処理を完結することそのもが一つの課題でもありました。まさに「ビッグデータ」を筆者が最初に体験した場でした。 2015年 15年前、少ないコンピューターリソースしか持たない我々は、いかに顧客をあまり多くない、説明しやすいグループに分けるかを考えていました。『顧客の顔の見える化』と当時の多くのプロジェクトでは呼んでいました。しかし、今日では消費者の嗜好が多様化し、サービスや商品も多様化かつ大量化し、サービスや商品の寿命が短くなり、販売チャネルも多様化しました。予測モデルを使用して、単に顧客を理解するだけではなく、収益を最大化するためには、そのような多様性を失わない大量のセグメントごとに予測モデルを作る必要がでてきたのです。 このような分析対象の数の増加や粒度の増加、さらには分析対象データ量の増大は、近年、組織の分析チームの責任者にとっては、「予測モデル作成業務の生産性の向上」というミッションとして、大きな課題になってきたのです。   従来、予測モデルの作成は、分析サービスを提供する企業などだけが実施する、一部の人の道具でした。しかし時代は変わりビッグデータブームにも後押しされ、アナリティクスを活用する/したい組織・企業は増加の一途をたどっています。しかし、高度な数学的考え方に基づく予測モデリング手法を高等教育で学んで社会に出る人材はそれほど増加していません。そこに、「アナリティクス人材」の不足問題が生じています。 2015年、ガートナー社は「市民データサイエンティスト」という言葉を新たに定義しました。これまで高度な分析に縁遠かった、統計学や数学の専門知識を持たない業務部門の担当者が必要に迫られて予測モデリングをするようになってきたという状況をうまく表現していると思います。   さらに、この15年で、情報技術の進化と共に、より計算が複雑な手法、すなわち、昨今では機械学習と呼ばれるような高度なアルゴリズム、複数のモデルを組み合わせるアンサンブル手法、など、以前は、コンピューターの処理能力の制約で利用できなかった洗練された大きな計算能力を要する手法が登場してきました。それぞれの手法には特徴や向き不向きがあり、データの性質や予測したい事象の性質に適した手法を使用することで、より良い意思決定が可能となります。SASもこの間、Base SASエンジンから、In-Databaseへ、そしてSAS In-Memory Analyticsへとアルゴリズムの実行環境をシフトしてきています。   この15年間で予測モデル作成プロセスそのものの考え方は変わっていませんが、それを取り巻く環境や期待が大きく変化したことにより、予測分析に対する要件も変化してきています。近年、アナリティクスを武器とする企業が求めている大きな3つのポイントは以下の通りです: 扱いやすさ: 高度な分析・ITスキルを持たないビジネスユーザーでも扱えること スピード: 大量データ、多数のセグメントに対してスケーラブルであること 正確性: 収益を左右するモデルのパフォーマンスが良いこと(精度が高いこと)  SAS® Factory Minerリリース SASはこのような要望に応える形で、このたびSAS® Factory Minerという新製品をリリースしました。 ボタンクリック一つで自動的に、 最新の機械学習アルゴリズムを使用して、 これまでに培ったベストプラクティスに基づいた、 最良の予測モデルを作成することが可能となります。   従来、GUIとはいえ、人手でひとつひとつ時間をかけて実施していた予測モデル作成業務の時代から、全自動の-すなわち、モデリングプロセスにおける試行錯誤と手動プロセスを不要とし、データの特性に応じた最適なデータ変換手法と最適な機械学習アルゴリズムを自動で選択肢し、一つの操作でセグメントごとの予測モデルを作成できる-時代がやってきました。 まさに、予測モデリングの世界における産業革命です。      SAS® Factory Minerの紹介ビデオ   60秒で語るSAS Factory Miner  

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小林 泉 0
すべてのSASユーザーのためのSAS® Studio

SAS Studioとは SAS Studioは、SASをWebブラウザから(HTML5)利用できるアプリケーションです。従来のようにクライアントPC上にSASをインストールする必要もなくなり、Webブラウザさえあれば、どこからでもSASエンジンを利用することが可能です。そのためもちろん、クラウド環境での利用にも適しています。統計やSASの学習目的であれば無償で利用可能なSAS University Edition / SAS OnDemand for Academicsのインターフェースに採用されているのでそれをご利用の方はすでに慣れ親しんでいらっしゃると思いますが、実はそれに限らず、ほぼ全てのSASユーザーの方がご自身のSAS環境で利用可能な次世代のインターフェースです。 SAS Studioを使用して、データ、SASライブラリ、SASプログラムを利用することができ、新規にプログラミングすることも可能です。 最新バージョンでは、多くのSAS Enterprise Guideユーザーに支持されている、マウスによるポイント&クリックでクエリを作成できる「クエリビルダ」も追加されました。 それだけはありません。SAS Enterprise Guideと同様、ポイント&クリック操作だけで背後でSASコードを自動生成させる様々な処理が用意されている「タスク」も用意されています。また、既存のタスクをベースに、あるいはテンプレートをベースに新規にユーザー定義タスクを作成できるようになっており、XMLを編集するだけで簡単に作成できます。 さらには、SAS Enterprise Guideのように、そのタスクとコードを組み合わせて、処理フローを作成するビジュアル・プログラミング機能も提供されています。   使い方 まずは、どのような操作感なのかを以下の動画でご確認ください!(日本語字幕付きなので音声出さなくても内容理解できます)   SAS Studioの日本語の利用ガイドもありますので、是非ご活用ください。下記日本語ドキュメントは最新リリース3.4の一つ前のバージョンのものになります。最新バージョンであるSAS Studio 3.4用の日本語ドキュメントも間もなく公開できる予定で、こちらのSAS Studioのドキュメントページにアップされる予定です。 プログラミング入門ガイド SAS® Studio 3.3 SAS Studioを使用してSASプログラミングを行うための基本的な使い方を紹介しています。 SAS® Studio 3.3 ユーザーガイド SAS Studioの全ての機能の操作方法を日本語で説明しています。 動作アーキテクチャ タスクやプログラムコードを実行すると、SAS StudioはSASサーバーに接続しSASコードを実行します。SASサーバーは、クラウド環境上に配置することも可能ですし(SAS OnDemand for Academicsや、SAS University

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