筑波大学学生によるAnalytics Experience 便り(3日目)

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現地時間 2017/9/18,19,20 にてSASの秋のグローバルイベントである、「Analytics Experience 2017 (以下AX2017)」がアメリカ合衆国ワシントンDCで開催中です。最終日も、日本から参加している筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻4年生の村井諒さん,小林大悟さん,白鳥友風さん3名による参加レポートを掲載します。

 

AX2017で印象に残ったセッションの紹介 by 筑波大学学生

AX2017の3日目が終わりました。今回は、この3日間で体験した様々なセッションの中で、私たち3人がそれぞれ印象に残ったセッションについてご紹介させていただきます。

 

1.Tools of the Trade: How and What to Pack in an Analytics Student’s Toolbelt(村井諒)

2.Keep the Bus Rolling : Improving Bus Stop assignment in Boston Public Schools(小林大悟)

3.How to Win Friends and Influence Executives: A Guide to Getting Your Point Across(白鳥友風)

 

1.Tools of the Trade: How and What to Pack in an Analytics Students Toolbelt

  • 発表者:Cali Davis( University of Alabama ), Megan Poole( JPMorgan Chase & Co. )
  • 報告者:村井諒

このセッションでは、アラバマ大学で行われているSASを使ったデータ分析の講義を例に、大学における4か月ほどの期間で行われる講義の間に、学生にどんなことを身につかせることができるか、身につかせるべきかを説いており、さらに実務におけるデータサイエンスではどんなことが重要なのかについてご紹介がありました。

実際に大学で教鞭をとられているCali Davis氏からはビジネスにおけるデータサイエンスの世界に臨む前に、学生のうちに身に着けておくべき事柄についてのご紹介があり、またMegan Poole氏からは同大学を出てプロのデータサイエンティストとして働いてみて、大学の講義がどう実務に活かされたのか、またどのようなことが大事だと感じたかについて述べられていました。

Cali Davis氏が考える学生のうちに身に着けておくべき事柄は以下の10個です。

  • コミュニケーション能力
  • 誠実さ
  • 専門分野を学び続けようとする情熱
  • 複数のタスクを平行して行う力
  • 様々な種類のプログラミングスキル
  • 技術的な知識
  • 推論の才能
  • 自信
  • 質問をすることに必要性を感じること
  • ユーモアのセンス

技術的な側面だけでなく、我々が初日に感じたデータサイエンスに臨むうえでの姿勢や、自信、さらにはユーモアのセンスも重要視されていたことが印象的でした。確かに、データサイエンスの世界では他人と協力しあいながらタスクをこなしていく場面が多々あることから、技術的なことだけではなく、人間的な素養も大事だと改めて気付かされました。

Megan Poole氏からは、現実ではデータはとにかく煩雑な形で存在していて、アナリティクスによって対処するには大きく分けて以下の3つの能力に長けている必要があると述べられています。

手法の理解

『この形のデータから〇〇のような結果を導くためには、△△の手法は使えて、□□の手法はつかえないな』など、目的を達成するためにどのような方法でアナリティクスに臨むべきかを判断する力を養うためには、様々な手法の理解が重要です。

ソフトウェアを使いこなす力

ソフトウェアを使いこなすことができなければ、非常に優れた統計的な考え方・問題解決までの能力を備えていたとしても、現実の煩雑なデータに対処することは難しく、価値のある結果を生み出すことはできません。

プレゼンテーションスタイル

様々な手法を完璧に理解し、ソフトウェアを使いこなし、価値ある分析結果を生み出すことができても、その結果を実際に見て物事を判断するのは『人』です。『人』に自分のやったことを齟齬なく、かつ興味を抱かせながら伝えるためには、プレゼンテーションの能力が非常に大切になってきます。

①・②については、アナリティクスを行う上で非常に重要なことであり、これらが無ければ価値ある結果を導き出せないということは簡単に想像がつくのですが、③で言及されていた『人に伝える力』は興味深かったと感じています。プレゼンテーションでは資料作りから話し方、使う単語、言葉遣いなど、様々な事柄に注意を払う必要があるため、奥が深く、正解も見えづらいのですが、だからこそ大事であると改めて感じました。

最後にMegan Poole氏から、アナリティクスの道を進む人向けに、興味深いアドバイスをいただきましたので、ご紹介いたします。

  • 『ビッグデータ(Big Data)』は『さらにビッグなデータ(Bigger Data Than Before)』になっていきます。それに合わせて私たちは成長し続けなければいけません
  • すべてのデータはストーリーを持っている、あなたの役割は、データの『声』になることだと思うとよいです。
  • 『繰り返し』ではなく、『解釈』をしなさい。常に『何故』と、『次は何をするべきか』という問いに答えなさい。
  • とにかく記録しよう!(メモ・コードともに!)

どれも、実際に励むことによってデータサイエンティストとしての素養が磨かれる事柄ばかりで、大変参考になりました。データサイエンスに携わる者ならば、常に心掛けておきたいですね。

 

2.Keep the Bus Rolling : Improving Bus Stop assignment in Boston Public Schools

  • 発表者:William Eger( Boston Public School ) , Jinxin Yi, ( SAS )
  • 報告者:小林大悟

ボストン・パブリック・スクール(BPS)は年間1億2千万ドルもの資金をスクールバス運営費用として投じています。646台ものバスが約4800個にも及ぶ停留所を通って最大2万5千人にも及ぶ生徒たちを毎日運んでいます。1日あたりの停車回数は20,204回(!)にも上るとのことです。バスの運行構造はあまりに巨大かつ複雑であり、運行費用は増加の一途を辿っています。コストの減少とより効率的な運用には、生徒の通学の利便性を可能な限り維持したまま停留所の数を減らす必要があります。日本と違い、スクールバスが一般的なアメリカならではの課題設定です。今回、BPSとSASのスタッフは停留所の位置の最適化というアプローチでこの課題の解決に挑みました。

生徒の住居の位置情報を基に以下のような制約条件を考えました。”停留所までの最大距離”、”生徒の学年に基づく停留所までの最大距離”、”近隣地域の安全性を踏まえた停留所までの最大距離”、”1つのバス停に対する生徒数の上限”の4つです。これらの条件の組み合わせを考え、より制限が厳しくなっていくシナリオを4つ作成しました。例えば、自宅から停留所までの距離を最大0.5マイルとする設定をシナリオ1とし、そこに低学年の生徒には停留所までの距離を最大0.3マイルに、高学年の生徒には最大0.6マイルに設定するというような生徒の学年による制約と、治安が悪い地域では停留所までの距離を最大0.2マイルにするというような、近隣地域の安全性を踏まえた停留所までの最大距離といった制限を加えたものをシナリオ2とします。

作成した4つのシナリオそれぞれで最適化を実施したところ、バスの停車回数を1000〜3000回ほど減らすことが出来ました。1度でピックアップできる学生の数が2人から16人に増加したことにより、停留所の数を1/8に減少させられたのです。この最適化により、停留所の数が大幅に減少し、BPSのバス運行は驚異的な改善を見せました。

最近では、各道路の混み具合をリアルタイムで確認できます。上記の制約条件に加え、通勤・通学時間帯の渋滞情報を用いた最短時間経路選択が出来れば、BPSの生徒にとってより使い勝手の良いスクールバスシステムになるのではないでしょうか。また、この内容は運送会社の配送センターの位置や配送順路の最適化などにも応用できそうです。発展や応用を次々に考えさせられるとてもわかりやすく興味深いセッションでした!

 

3.How to Win Friends and Influence Executives: A Guide to Getting Your Point Across

  • 発表者: David Harcourt ( Associate Manager, Employee Insights, Yum! Brands Inc )
  • 報告者:白鳥友風

プレゼンターであるDavid Harcourt氏は、学生時代、データサイエンスにとても長けていました。しかし、人前で発表する際に聞き手が自分の意見や考えをよく聞いていない、あるいは興味を示していないということに気が付きます。この経験から、彼はいくら高度な分析ができてもその効果を聞き手に理解してもらい、説得できなければ意味が無くなってしまうと考えました。そこで、わかりやすく自分のアイディアを聞き手に伝えるには、どのようなプレゼンテーションをするべきかを再考しました。これにより、パワーポイントの図表の見せ方やアニメーションの使い方等の工夫、なによりも聞き手を「顧客」と考え相手の需要を知り、それに対して効果的にアプローチする姿勢を持つことが大切である、ということを結論付けました。

具体的な改善方法では大きく分けて以下ように説明されています。

  • 自分の理解を相手がくみ取ってくれると決めず、解釈をしっかり共有する
  • 説明したい関係やデータに合わせた図表を使用し、色分けも考える
  • 大まかな内容で見やすいスライドか、詳細で複雑なスライドかは状況に応じて使い分ける
  • 自分の努力ややりたいことを強調せず、聞き手が知りたいこと、やるべきことを強調する
  • 聞き手を「顧客」と捉え、需要を把握しそれに対応した解決策を明示する

このように、ソフトウェアに関する技術、プレゼンテーションにおける意識について重点的に紹介されています。

この発表を聴講して疑問に思ったことは、データサイエンスに精通する学生、企業関係者、教育関係者の皆様が参加されているこのカンファレンスにおいて、なぜこのような一見あたりまえでよくありそうな問題を取り上げたのか、ということです。いかにして自分のアイディアを相手に理解させ、さらに説得力をもたせて影響を与えていく、というような伝え方の工夫に関する技術や考え方はプレゼンテーションの改善のために頻繁に取り上げられる議論であり、新鮮な感覚がありません。データサイエンスに精通する人も他分野の人も、このような経験をした方は多く、誰しも同じようなことを考えたのではないかと思いました。では、なぜ一見これほど馴染みのあると思われる話題をプレゼンテーションしたのでしょうか。私が考えるに、特にこのカンファレンスのメイントピックであるような「アナリティクス」に関しては、プレゼンテーションを聞く側にアイディアの具体的なイメージをつかんでもらうことが難しく、果たしてその分析の効果は投資に見合うのか、そもそも本当にやる意味があるのか、といったような疑問を抱かせてしまいやすいように思います。このように、取り組んだこととそれに対する結果との関係性がつかみにくいような分野においては、なぜ有効なのか、なぜこのような結果が出たのか、ということをわかりやすく伝えることがいつまでも重要となるのではないでしょうか。だからこそ、この当たり前と捉えられるようなことが一番重要であることを再渇した、というように感じました。また、「慣れ」により何かを始めたころ大切にしていたことや意識を忘れ、基礎的な部分などをおろそかにしてしまう、というようなことは多くの人々が経験したとことだと思います。この「慣れ」によって、聞き手の需要を捉えることを疎かにし、結果をわかりやすく伝えることよりも分析について重点的に説明してしまうことを防ぐべきだという主張としても捉えられるのではないでしょうか。聞き手の需要を理解することの重要性を身をもって体験し、いかに顧客が知りたいこと、やるべきことを把握し、アナリティクスの有用性を簡潔かつ相手に影響を与えるように説明するかを試行錯誤して考えた方だからこそ、改めてこの重要性を伝えたかったのだと感じました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。AX2017では最新の事例や、分析手法、知識の紹介などを通して、データサイエンスの最先端に触れることができ、滅多に得られない貴重な経験をさせていただきました。また、データサイエンティストに求められる素養についても数多くのセッションで紹介されました。

私たちは様々なセッションを聴講することを通して、現在のデータサイエンスを取り巻く環境を体感することができました。大事なことは、ここで感じたことを日本に帰ってどう活かしていくかだと思います。将来、『AX2017の経験があったからこそ、今の自分がいる』と自信を持って言えるように、常にデータサイエンスに対して好奇心を保ち、前に進み続けていきたいです。

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About Author

小林 泉

Senior Manager, Enterprise Analytics Platform Group, Customer Advisory Division

1999年SAS Institute Japan入社後、金融・通信・製造・小売・官公庁を中心に顧客分析やサプライチェーン最適化などのアナリティクス・プロジェクトにて、データウェアハウスやアナリティクス・プラットフォームの設計/構築からアナリティクスのコンサルティングを担当。その後、プリセールスとしてSASアナリティクス・ソリューションの提案、顧客のデータ・マネージメント課題解決への従事、最新技術を利用したビッグデータ活用やSAS on Hadoopビジネスの立ち上げ、普及活動に従事。 データのリアルタイム分析と、大規模分析基盤アーキテクチャ、機械学習についての豊富な知見、経験を持つ。 2016よりSAS Viyaの立ち上げを担当し、OSSの世界へ新しい価値を提供するビジネスを推進。 2020年の興味は、「現実世界のデジタライゼーションの限界と展望」

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