Author

小林 泉
RSS
Senior Manager, Analytics Platform and Cloud Solution, Customer Advisory Division

1999年SAS Institute Japan入社後、金融・通信・製造・小売・官公庁を中心に顧客分析やサプライチェーン最適化などのアナリティクス・プロジェクトにて、データウェアハウスやアナリティクス・プラットフォームの設計/構築からアナリティクスのコンサルティングを担当。その後、プリセールスとしてSASアナリティクス・ソリューションの提案、顧客のデータ・マネージメント課題解決への従事、最新技術を利用したビッグデータ活用やSAS on Hadoopビジネスの立ち上げ、普及活動に従事。 データのリアルタイム分析と、大規模分析基盤アーキテクチャ、機械学習についての豊富な知見、経験を持つ。 2016よりSAS Viyaの立ち上げを担当し、OSSの世界へ新しい価値を提供するビジネスを推進。2020年からSAS Cloudソリューションの推進を担当。最近の興味は、「現実世界のデジタライゼーションの限界と展望」。

Artificial Intelligence | Machine Learning
小林 泉 0
人工知能:ブームと現実を切り分けて認識するために

現在大きなブームとなっているAIですが、行き過ぎた期待と警戒がその現実を見誤らせ、企業における経営課題の解決において、タイムリーな価値創出を停滞させている場面も見受けられます。現実を正しく捉えるための記事を、SASの上級副社長およびCTOであるオリバー・シャーベンバーガー(Oliver Schabenberger)が書いていますので、今回はそれを日本語訳してお届けします。 === 私たちはエキサイティングな時代に生きています。私たち人間と機械、オブジェクト(物体)、モノとの関係は急速に変化しつつあります。 洞窟で暮らしていた頃から、人間は受動的な(自動的に動くわけではない)道具と自分の声に自らの意思を託してきました。今日では、マウスとキーボードは操作したとおりに動きますし、Amazon Echoなどのスマートデバイスは、照明の点灯のような単純なタスクや、より複雑なタスク(例:人間の質問にアナリティクスを用いて応答する)の実行を手助けしてくれます。 しかし、人工知能(AI)の発展により、潮目が変わる可能性があります。機械は受動的なオブジェクトから、人間の生活に自らを織り込む能動的な存在へと変貌を遂げることができるのでしょうか? 機械が人間を動かすようになるのでしょうか、それとも人間が機械を動かし続けるのでしょうか? オブジェクトが「あなたの代わりに〇〇を済ませました」と人間に報告するようになるのでしょうか、それとも、人間が今後も何をすべきかをオブジェクトに指示し続けるのでしょうか? あらゆるモノがよりスマート、よりインテリジェントになっていく中、私たち人間は、自律型のインテリジェンスが取り仕切る生活空間の「囚われ人」となってしまう恐れはないのでしょうか? そのような状況に私たちはどこまで近づいているのでしょうか? AIの現状 あなたがもし、機械が世界を征服するのではないかと夜な夜な心配しているとしたら、どうぞぐっすり眠ってください。今現在使われているテクノロジーでは、決してそうした事態は起こりません。昨今では、少しでも賢い動作や想定外の動作をすれば何でもAIと呼ぶのがトレンドのようですが、多くは実際にはAIではありません。私の電卓は、私よりも計算能力が優れていますが、AIではありません。決定木もAIではありませんし、SQLクエリの条件句もAIではありません。 しかし、AIへと向かうトレンド、すなわち「機械、デバイス、アプライアンス、自動車、ソフトウェアに更なるスマート性を組み込む」というトレンドが存在するのは事実です。 人間よりも圧倒的な正確さでタスクを実行できるアルゴリズムの開発には、驚異的な進展が見られます。少し前までコンピューターには囲碁は無理と思われていたにもかかわらず、今や機械が人間を打ち負かし、人間には敵わないレベルへと突き進んでいます。また医療分野では、医用画像から特定タイプのガンを発見するアルゴリズムの正確性が、放射線科医と同等レベルに達しており、まさに患者の人生を一変させるような成果です。 これらのアルゴリズムが超人的な能力を示すのは、与えられた仕事を高い信頼性および正確性で、不眠不休で反復実行するからです。とはいえ、人間のように思考または行動できる機械を生み出す段階からは程遠いのが現状です。 現在のAIシステムは、人間が行うタスクを「コンピューター化された賢い方法」で実行するようにトレーニングされますが、トレーニングの対象は1つのタスクのみです。囲碁をプレイできるシステムは、ソリティアやポーカーをプレイすることができず、そのスキルを習得することもありません。自律走行車を運転するソフトウェアは、家の照明を操作することができません。 これは、この種のAIが力不足ということではありません。むしろ、あらゆる用途に高い専門性を提供できるため、多くの業種、恐らく全ての業種に変革をもたらすポテンシャルを秘めていると言えます。しかし、AIで何を成し遂げることができるかに関しては、先走りは禁物です。トレーニング用データにもとづき、教師あり手法を用いてトップダウン方式で学習するシステムは、データの内容を超えて成長することができません。つまり、こうしたシステムには創造、革新、推論(論理的に思考)は不可能です。 「信頼の飛躍的拡大」を選ぶかどうかは人間次第 たとえアルゴリズムがインテリジェンスを持つ日が来るとしても、必ずしも私たちの人生をアルゴリズムに委ねる必要はありません。アルゴリズムの利用を意思決定支援システムに留める、という選択も可能です。その対極にあるのは、あらゆる意思決定を人間の代わりにアルゴリズムに行わせるという選択であり、これは「(人間の機械に対する)信頼の飛躍的拡大」の究極と言えます。 そこには、意思決定において人間の介入は一切ありません。機械の自律性を手放しで受け入れて初めて、「真のAI」を受け入れる準備が整ったことを意味すると筆者は考えます。しかし、アルゴリズムが信頼できる偏りのない意思決定を行えるようになり、それがひいては人間に最大の利益をもたらすことが実証されうるとして、自分の人生の手綱を渡し、自分は何も入力せずにアルゴリズムに意思決定を行わせることを、あなたは心地よく感じるでしょうか? 自由に判断させた場合、機械はどれほど的確に振る舞うと期待しますか? 機械がどれほど短時間で仕事を学習すれば満足でしょうか? そして、学習を重ねる中、機械はいつモラルを獲得するのでしょうか? こうした質問を不快に感じるとしても、ご安心ください。あなただけではありません。筆者は、ソフトウェア・エンジニアがプログラミングしたモラルや発展途上のアルゴリズムが学習したモラルの不完全さのせいで命を失うよりは、自分自身の愚かさのせいで命を失う方を選びます。 インテリジェンスという幻想は今現在、完全に人間の掌中にあり、当面は人間のコントロールなしでは存在しえません。 当面私たちがAIに望めるのは、つい感心してしまうほどの賢さです。その他はブームに便乗した大騒ぎに過ぎないでしょう。 将来への準備 現在のような形のAIにはインテリジェンスがあるのでしょうか? そうではないと筆者は考えます。 インテリジェンスと呼ぶためには、何らかの形の創造性、革新性、直感力、自主的な課題解決力、感受性が必要です。私たちが今現在、ディープ・ラーニングにもとづいて構築しているシステムは、こうした特性を備えることができません。AIがいつインテリジェンスを獲得するのか、その時期をここで予測するつもりはありません。数十年前には「その段階に近づいており、数十年後には機械が人間のように行動したり思考したりするようになる」と考えられていましたが、そうはなっていません。今日のテクノロジーでは、依然としてこの問題を解決できないのです。 人類が「真のAI」の時代に到達するためには、破壊的なテクノロジー・シフトを経なければなりません。人類はその解決策をまだ発見していないと考えます。ただし、その探究を続けていることは確かです。

Students & Educators
小林 泉 0
筑波大学学生によるAnalytics Experience 便り(3日目)

現地時間 2017/9/18,19,20 にてSASの秋のグローバルイベントである、「Analytics Experience 2017 (以下AX2017)」がアメリカ合衆国ワシントンDCで開催中です。最終日も、日本から参加している筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻4年生の村井諒さん,小林大悟さん,白鳥友風さん3名による参加レポートを掲載します。   AX2017で印象に残ったセッションの紹介 by 筑波大学学生 AX2017の3日目が終わりました。今回は、この3日間で体験した様々なセッションの中で、私たち3人がそれぞれ印象に残ったセッションについてご紹介させていただきます。   1.Tools of the Trade: How and What to Pack in an Analytics Student’s Toolbelt(村井諒) 2.Keep the Bus Rolling : Improving Bus Stop assignment in Boston Public Schools(小林大悟) 3.How to Win Friends and Influence Executives: A Guide to Getting Your

SAS Events | Students & Educators
小林 泉 0
筑波大学学生によるAnalytics Experience 便り(2日目)

現地時間 2017/9/18,19,20 にてSASの秋のグローバルイベントである、「Analytics Experience 2017 (以下AX2017)」がアメリカ合衆国ワシントンDCで開催中です。前回に引き続き、今回は、日本から参加している筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻4年生の村井諒さん,小林大悟さん,白鳥友風さん3名による参加レポート2日目を掲載します。 e-Poster部門@AX2017 発表への道のりby 筑波大学学生 昨日に引き続き、アナリティクスの最先端を行く発表が次々に行われていく中、私たちは今回の参加目的である二日目正午のStudent e-Poster部門の発表に臨みました。 イベントセッション情報:「Optimization of discounts at a retail store based on POS data keeping customer purchasing experience」 Student e-Posterは、学生がSASの製品を用いてアナリティクスの価値および可能性を提供する場です。学生たちは自身が作成したポスターを基に参加者にプレゼンテーションを行います。このセッションでは一方的な発表ではなく、ポスターを見に来たデータサイエンスに携わる教育関係者や企業関係者の方々と対話形式で発表の内容に関する意見を交換します。 今回のポスター発表は筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻の目玉授業であるマネジメント実習で行った発表の内容を基に行ったものです。マネジメント実習では、学生がデータサイエンティストとして実データの分析から経営改善案の作成までを行う講義であり、ビジネスにおけるデータサイエンスの重要性を学ぶことができます。講義は10週にわたって行われ、プロのデータサイエンティストの方々からアドバイスを受けながら、アナリティクスを通じて改善案を練っていきます。これらの一連の取り組みは、同大学主催のビジネスデータ分析コンテストと平行して行われ、最終発表ではデータの提供企業の経営層の方を前に発表をし、その場で表彰が行われ、かつフィードバックを受けるという内容です。 参考:「SAS、大学におけるデータ・アナリティクス教育の質的向上のため、筑波大学に分析環境を提供」 私たちはSAS Enterprise Guideを用いて、小売店のPOSデータから価格と販売数量の関係を分析し、販売数に寄与しない値引きを明らかにすることで、コストを削減して経営改善を図る手法を提案しました。 今回のStudent e-Posterでは、先に上げたSAS Enterprise Guideや、より高度な分析を行うことができるSAS Enterprise Minerを使用してアナリティクスを行った他大学の学生によるポスターが多数展示され、データサイエンスに携わる方々に自分たちのポスターの内容を説明しました。聴講者の中には、ビジネスの第一線で活躍されている方も見受けられました。 このような環境でのポスター発表を通して、大学の実習講義では得ることの出来なかった、ビジネスに携わるデータサイエンティストとして重要な『最大限に利益を追求する姿勢』を学び取ることが出来ました。 発表中に企業の方から受けた質問の中には、「この手法をいかにして自分たちのビジネスに活かせるか」、「なぜ価値のない値引きだけに着目したのか」、「もっと利益を生み出すためにはまだできることがあると思うが、なぜそれをしなかったのか」といったものがありました。 これらの質問は、実習内では気づけなかった、利益を最大限に追求するビジネスの姿勢に基づいたものです。 事実私たちが提案した、無駄な値引きを明らかにすることによりコストを削減する手法は、経営改善を果たす上での一つの手段でしかありません。 私たちは無駄なコストの削減にのみ注目した価格最適化を行いましたが、価格の最適化は、無駄なコストの削減だけでなく、販売点数の増加や、時間とともに変化する顧客の性質なども踏まえて行うことができるはずです。 私たちは経営改善可能性として「無駄な値引きを減らす」という一つの案にたどり着いた結果、いかに無駄な値引きを無くすかということに固執していました。これは目標が、「経営改善」から「経営改善のための分析」にいつの間にか変わってしまい、分析すること自体に集中しすぎてしまったからです。特に私たちのようにビジネスの経験が少ない日本の学生はこのような方向に進んでしまう傾向があると思います。実際のビジネスにおいては、何が必要なのか、何ができるのかを常に意識し、そのうえでアナリティクスを活用することが重要だと考えられます。このことからビジネスにおいて、取りうる選択肢を柔軟に取捨選択し、最大の利益を求める姿勢を保ち続けることの大切さを実感しました。 このことを私たち学生が日本のデータサイエンス教育から学び取ることができれば、ビジネスに携わるデータサイエンティスト育成がさらに有意義なものになっていくだろうと感じました。 イベントも残り1日となりました。明日も様々なセッションを通し、学び取れることはすべて学び取るという心持で最終日に臨みたいです。

1 … 5 6 7 8 9 … 17