カオス状況下での予測/フォーキャスティング: IBFバーチャル・タウンホールからのメモ

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この記事はSAS Institute Japanが翻訳および編集したもので、もともとはMichael Gillilandによって執筆されました。元記事はこちらです(英語)。

カオス状況下での予測/フォーキャスティング

Institute of Business Forecasting(IBF)は、「世界的パンデミックというカオス状況下での予測と計画」に関して80分間のバーチャル・タウンホールを開催しました。現在、それを録画したオンデマンド・ビデオが公開されており、一見の価値が大いにあります。そこには、以下のような経験豊富な識者陣による堅実かつ実践的なガイダンスが満載です。

  • エリック・ウィルソン(Eric Wilson)氏: IBFのソートリーダーシップ担当ディレクター(司会者)
  • ダスティン・ディール(Dustin Deal)氏: 北米ビジネス・オペレーショズ担当ディレクター、Lenovo社
  • パトリック・バウアー(Patrick Bower)氏: グローバル・サプライチェーン・プランニング&カスタマー・サービス担当シニア・ディレクター、Combe社
  • アンドリュー・シュナイダー(Andrew Schneider)氏: サプライチェーン担当グローバル需要マネージャー、Medtronic社
  • ジョン・ヘルリーゲル(John Hellriegel)氏: IBFのシニアアドバイザーおよびファシリテーター

以下に、私が各パネリストから得た重要な知見をまとめます。

ジョン・ヘルリーゲル氏:

  • 今現在、マクロ予測は相当困難であり、ミクロ予測(製品レベルに至るまで)は更に困難である。
  • 平時状況を超えるレベルで多数の介入要因(例:政府による刺激策、原油価格の下落など)が存在しており、それら全てが不確実性と複雑性を増大させている。
  • 高い予測精度が期待できないことから、需要計画担当者は企業における「不確実性の理解」と「適切な意思決定の実現」を支援することにフォーカスするべきである。
  • 最も役立つのは、明確な前提条件に基づくシンプルなモデルである可能性が高い(例えば、個々の品目を調整しようと多大な労力を費やすのではなく、「3ヶ月間、各カテゴリーで25%の削減を実施する」など)。

ジャスティン・ディール氏:

  • 中国では生産が回復しつつあるが、物流の遅延は依然として存在する。
  • マクロ/ミクロの両レベルでデータを収集するべき。これには、チャネルの在庫とセルスルー(実販売数)も含まれる。
  • チャネル在庫が低水準な場所や、即座の補充が必要な場所を把握するべき。
  • プランニング(例:S&OP)をもっと頻繁に実行するべき。

アンドリュー・シュナイダー氏:

  • 今現在は、典型的な需要計画を行うのではなく、代わりに、「需要衛生サービス」(データ・クレンジング、仕入数/実売数の比較・把握など)にフォーカスするべき。
  • 物事が平時状況に回復するまでの間は、需要の統御(コントロール)および形成(シェイピング)にフォーカスするべき。
  • 変動係数を活用して、どの製品がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の大規模な感染拡大のインパクトを最も受けるのかを特定するべき。そして、そのインパクトに従って製品をセグメント化し、リスクベースのABC分析を考慮する。
  • 「データの観察・収集という “受動的” な取り組み」と「欠品状況から “入手可能な代替製品” への需要推進という “能動的” な取り組み」とを区別するべき。
  • 需要シグナルの品質を評価するべき。POS(販売時点情報管理)システムを導入済みであれば申し分ないが、未導入の場合でも、顧客の真のニーズの解明に努めるべき(注文数/注文減少数/注文残数などの状況を踏まえた上で)。
  • 組織内のデータだけでなく、外部の追加的なデータソースの活用も試みるべき。そこから何が分かるか?
  • 需要の確率分布を考慮するべき。ただし、過剰な取り組みは禁物。「平時状況に回復した後、組織がトラブルに直面するような事態」を招いてはならない。
  • 今現在は、精度についてはそれほど心配する必要はない。代わりに、様々なアプローチの予測付加価値(FVA)を検討するべき。
  • 冷静さを維持するべき。現実的に考え、過剰な反応を示す前にデータの理解に努めるようにする。

パトリック・バウアー氏:

  • 今現在は多大な複雑性と曖昧性が存在しており、多くの需要計画は現実的ではない。
  • 3月末にはより多くのことが分かる。当面は週次の状況を見守ることしかできず、より多くのことが分かるまでは全面的な再計画は行えない。
  • 今現在、希少製品に関してブランド・ロイヤルティは存在しない。そのため、ブランド各社は真の需要を把握するのが難しい状況を抱えることになるだろう。
  • あらゆることを文書化し、既存の計画の前提条件を再検討するべき。データ(特に注文減少数、注文残数、将来のリターン)を精査し、自社の顧客の理解に努めること。将来のキャンセルについても油断しないこと。
  • サプライヤーは短期納入に対応できない可能性がある。そのため、リードタイムを常に意識しておくべき。
  • 大きな課題は、データの解釈、外れ値の処理、ヒストリーの調整、モデルの調整などをいかに行うかということ。2ヶ月後、より良い理解が得られた時点で、これらを行うことが望ましい。データの収集は行うが、[計画の]変更を急いではならない。
  • S&OPを用いて、「ニュー・ノーマル(新たな平時状況)」(そこには景気後退が含まれる可能性が高い)のための計画を立てるべき。
  • 深呼吸を心がけ、過剰反応しないようにする。以前に似たような状況を経験したことのあるベテランの同僚に支援を仰ぐべき。

チャーリー・チェイス(Charlie Chase)からの追加の提唱事項

筆者の同僚であるチャーリー・チェイスが考案した追加の提唱事項については、RIS Newsに掲載された彼の新しい記事「6 Steps to Predicting Shifting Demand Patterns While Navigating the Coronavirus Crisis」(新型コロナウイルス危機下の舵取りにおいて需要パターンの推移を予測するための6つのステップ)を参照してください。彼が提唱するステップは以下の通りです。

  1. 真の消費者需要を反映するダウンストリーム・データ(市場や販売現場のデータ)を活用する。
  2. 組織の需要予測・需要計画に、高度なアナリティクスや機械学習アルゴリズムを採用および実装する。
  3. 短期的な需要予測・需要計画のためのプロセスを実装する。
  4. ソーシャルメディアの情報を取り込む。
  5. 高粒度のビューと地域別の状況にフォーカスする。
  6. 全てが平時状態に戻った後、異常な過去データをどのように取り扱うべきか?[を検討しておく]

SASの新型コロナウイルス・ダッシュボード

需要の予測・計画の取り組みに役立つ可能性のある更なる洞察としては、筆者の同僚たちが、新型コロナウイルスの現況、場所、拡散状況、トレンド分析を描き出す新型コロナウイルスのレポート(SAS Visual Analyticsで作成)を公開しています。

データは毎晩更新されており、COVID-19の感染拡大を視覚化できる機能は、問題意識の喚起、そのインパクトの理解に役立つほか、究極的には予防努力の支援に役立つ可能性があります。ぜひ、SASの新型コロナウイルス・ダッシュボード(英語)にアクセスし、ESRI社の技術を利用したマップ、新型コロナウイルスの統計情報、そして全世界の拡散状況のタイムライン・アニメーションをご覧ください。

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